研究概要 |
急性膵炎の重症化と多臓器不全の機序とNF-κBとの関与を解明するため、新規NF-κB選択的阻害剤DHMEQを用いて、セルレイン(Cn)膵炎モデルで検討した。 まず、C57BL6/Jマウスを用いてCn急性膵炎を作製した。コレシストキニンanalogであるCnを1時間おきに6回腹腔内投与(ip)することで急性膵炎が起きていることを確認した。DHMEQによる急性膵炎の抑制効果を検討するため、まずCn投与2時間前にマウスにDHMEQを12mg/kgの用量でipし(予防的投与群)、文献上言われている膵炎のピークであるCn初回投与12時間後に血清、組織学的検討を行ったが、血清のlipaseではcontrol群に比較し、やや低かったものの有意の抑制を認めず、amylaseは有意の抑制をみなかった。また、組織学的検討においても膵炎の程度(空砲化、壊死性変化、浮腫)はcontrol群と同程度であった。そこで、犠牲死の時間を変えて検討したが、いずれもcontrol群と比較して差がなかった。そこで、DHMEQ投与時間をCn最終投与後2時間に変更し(治療的投与群)血清、組織学的検討を行った。しかし、予防的投与群と同様に血清,組織とも膵炎の程度はcontrol群と同程度で膵炎を抑制することは出来なかった。さらに、全身への影響として肝機能、腎機能の指標としてGOT, GPT, LDH, BUN, Creを測定したがいずれも予防、治療的投与、測定時間に関わらずcontrolと同程度であった。 そのため、今後は急性膵炎の重症化に続く多臓器不全モデルとしてCn投与後にLPSをipし致死率モデルを作製しDHMEQによる致死率の改善効果および血清、組織学的評価の検討を行う予定である。
|