研究概要 |
脱メチル化剤投与によって発現が変化した遺伝子群に、細胞浸潤に関与する遺伝子が多く含まれるというこれまでの我々の結果を基に、エピジェネティックに制御されている機能不明な遺伝子について、その機能解明、特に細胞浸潤能について重点的に解析することを目標とした。食道癌、肝細胞癌、胃癌、大腸癌由来の培養細胞を解析対象とした。脱メチル化剤(5-aza-2'-deoxycytidine)1μMを96時間投与することによって、2倍以上の発現増加を認めた遺伝子をマイクロアレイ解析によって絞り込み、エピジェネティックな因子によって制御される遺伝子候補群とした。発現変化をリアルタイムPCR法にて確認した。その中で、食道癌由来培養細胞を用いた検討で、異常メチル化との関連が深いと考えられるchromosome 15 Open reading frame 48(C15orf48)に注目した。この遺伝子のプロモーター領域(転写開始部位より上流500塩基程度まで)のCpGアイランドのメチル化の状態をBisulfiteシークエンス法にて異常メチル化を確認した。この機能不明のC15orf48の完全長cDNAが搭載された発現プラスミドを用いて、食道癌由来培養細胞であるTE-1, TE-2においてC15orf48が安定的に高発現するクローンを作成し、Boyden Chamber法、wound heal assayを用いて細胞浸潤能の変化を検討したところ、C15orf48が高発現するクローンでは、有意に細胞運動能が低下していた。以上より、機能不明の異常メチル化により発現が制御されるC15orf48遺伝子の機能解析を行い、細胞運動能との関連性が深いことを明らかにした。
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