研究概要 |
平成19年度に実施された研究内容は、腹腔鏡下胃切除モデルを作成し,Radius Surgical System(Radius)を用いておこなわれた胃十二指腸吻合の評価である.内視鏡外科手術用トレーニングボックス(Tuebinegn MIS Trainer^<TM>, Richard Wolf GmbH, Knittlingen, Germany)にブタの上腹部臓器(胃十二指腸ならびに小腸一部)を組み込み,腹腔鏡下胃切除モデルを作成した.胃十二指腸の境界を離断し,その後,同部位の吻合を行った.吻合は3-0吸収編糸による連続一層吻合でおこなった.吻合手技はすべて,Radiusの扱いに十分慣れた同一外科医により行われた.デジタルビデオレコーダーにて,20回全ての吻合時間を記録測定した. 1.吻合手技時間は,20回までに緩やかな短縮傾向を示した.手技習得回数(ラーニングカーブ)は,10回前後と判断された. 2.吻合部に,肉眼的に明らかな「綻び」および「組織損傷」があるかを確認した. 明らかな綻びは認められず,組織損傷は合計3か所認められた.組織損傷は,吻合回数にかかわらず不定期に認められた.1.の習得回数と相関はないと考えられた. 3.吻合完成後は,吻合個所の両端を結紮して,加圧バックを使用し,生理食塩水を用いた耐圧試験をおこなった.漏れが認められるまでの最高耐圧を記録した.最高耐圧平均値は320mmHgであった.耐圧は吻合後(術後)急性期における吻合部の強度を再現することが予想され,平均圧は十分であると考えられた. 1〜3の結果を総合的に検討すると,Radiusによる腹腔鏡下での胃十二指腸吻合は容易に導入可能であり,急性期を想定した吻合強度は十分であると判断された.
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