消化管間質腫瘍(GIST)は、発生原因としてc-kit遺伝子の機能獲得性変異が報告されて以来、診断および治療は一変した。特に分子標的治療薬のイマチニブがGIST患者に投与され有効な成績を収め、進行再発GISTに対してはイマチニブ投与が第一選択となってきた。しかし最近では二次耐性の出現が問題となっている。この原因としてc-kitおよびPDGFA遺伝子の二次変異などが報告されているが未だ不明な点も多く、イマチニブ耐性機序のみならずGISTの生物学的悪性化機序の解明が今後の臨床に重要である。さらにイマチニブの副作用発現は必発であり、副作用のために継続囚難となる例が問題視されている。一方GISTの肝転移症例では、肝外病変のない患者にたいする外科切除が有効である可能性を示唆した報告もあり、肝切除の再検討が話題となっている。浜松医科大学第二外科學講座ではGIST肝転移症例からGISTめ悪性化機序とc-kit遺伝子領域のLOHとの相関を検討してきた。本年度までに集積した新たな症例を加えた12例の検討では、LOHの有無とKI-67が5%以下め二つの因子を組み合わせた結果予後とめ相関が認められた(Cancer Science 2007:98:1734-1739)。現在当科で3症例が追加され、さらに大阪大学医学部や新潟大学医学部に協力を得て症例を集積していき、c-kit領域のLOHと悪性化のメカニズムを検討していく予定である。もしLOHと悪性化との関係が明らかにされ肝転移症例を選別することが可能であれは、肝切除後にイマチニブ投与の回避可能症例を選択する基準を決めることができる可能性がある。本研究は外科的切除の意義にっき再検討を与える内容であり、本邦における臨床診療に与える影響は大きく、重要度は高いといえる。また遺伝子変化に伴う悪性化機構という基礎的検討を行うことも腫瘍生物学的に重要である。
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