研究概要 |
消化管間質腫瘍(GIST)は, Cajalの介在細胞由来でc-kit遺伝子の機能獲得性変異が発生の原因といわれている. 最近の報告では臨床症状をきたさないような小さなGISTでもc-kit遺伝子変異があり, 腫瘍の発生にc-kit遺伝子変異が必要であるが, 腫瘍の進展や悪性化には更なる遺伝的な要因が関与しているのではないかと考えられるようになってきた。我々は肝臓の転移性GISTの解析からc-kit領域のLOHが悪性化に関与している可能性を報告してきたが、転移が発生するメカニズムは不明であった。本年度は切除検体を用いて網羅的遺伝解析を行うことで, 悪性化に関与する遺伝子の同定を試みた。2004年8月〜2008年11月までに当院で手術を施行した原発GIST5例と肝転移GIST8例を対象とし, すべての検体からmRNAを抽出しマイクロアレイ解析を施行した。悪性化に関与する遺伝子検索のため1. 原発部位2. 大きさ3. Ki67 4. exon変異5. 原発巣と転移巣6. イマチニブ投与転移群と非投与転移群7. 再発までの期間をパラメーターとして各々2群に分け, 発現の異なる遺伝子群を検索した。【結果】2群間での遺伝子発現をp=0.05, Fold change2倍以上をカットオフ値として解析した結果1. 235遺伝子2. 208遺伝子3. 3遺伝子4. 19遺伝子5. 429遺伝子6. 75遺伝子7. 58遺伝子が候補に挙がり, 現在RT-PCRで解析中である。【意義と重要性】現在GIST切除後のイマチニブ投与の有用性は確立していない。本研究で悪性化に関与する蛋白が同定可能であれば、切除検体の免疫組織染色を施行することで術後補助化学療法の適応を決定することが可能になる可能性がある。また悪性化蛋白が同定可能であれば, 新たな分子標的治療薬の開発につながる可能性もあり極めて重要である。
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