1.25例の化学療法前の生検サンプルを用いたヒト全遺伝子型DNAチップによる網羅的遺伝子発現解析の結果を用いて、化学療法の感受性に関わる遺伝子群の同定を行った。感受性群・非感受性群のそれぞれ2群において発現が異なる遺伝子を1万回のpermutation法を用いて順位付けした。この順位に基づいてweighted-vote法による予測診断を行ったところ、上位10〜200遺伝子で診断性能が最も高く約80%の診断精度であり、かつ安定した診断能力を有していた。 2.上位の200遺伝子の中からプライマーの設計が可能な遺伝子を無作為に17遺伝子を選択し、定量的RT-PCRを行った。先程用いた25例の生検サンプルによりPCRとDNAチップのデータ相関、および化学療法の感受性予測診断能を検討したところ、17遺伝子のうち7遺伝子において高い発現データの相関を有していた。これら7遺伝子の診断能力はDNAチップで得られた80%の診断能力とほぼ同等であった。さらに、新規の食道癌生検サンプルを用いた7遺伝子の発現パターンによる予測診断も70%程度の結果が得られた。さらにDNAチップとの相関の高い遺伝子の数を増やし、より高い診断能力を持つ診断システムを構築中である。 3.定量的RT-PCRによる検証実験に平行して、新たにサンプリングした化学療法前の生検サンプル20例の採取を完了した。ヒト全遺伝子型DNAチップによる遺伝子発現解析を行い、このデータを用いて感受性予測診断モデルの再検証を行う予定である。 臨床診断用DNAチップによる臨床応用に向けて、チップの改良を行っている。より汎用性を高めるために、インクジェット方式によるDNAプローブの基盤への配置を行い、チップ間でのグリッド形状の均一化、DNAプローブ濃度の高密度化と一定化を実現した。また、1チップあたりに8assayまで可能なチップを開発中である。
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