研究概要 |
胆道癌は手術時に進行例が多く、予後不良の悪性疾患である。従って有効な抗癌剤治療が予後改善には必須となってくる。現在胆道癌に使用されている抗癌剤は5FUとジェムシタビン(GEM)が主な薬剤であるが、奏効率は必ずしも良好とは言えない。 本研究では、S-1およびGEM療法あるいはS-1+GEM併用療法を行うにあたって、S-1(5FU)およびGEMの感受性を規定する因子の発現解析を行い、投与前に薬剤効果を予測する個別化抗癌剤治療の臨床実現にむけた基礎的実験を計画した。 まず、胆道癌細胞株6株を用いたin vitro実験を行った。GEM感受性因子であるRRM1発現はGEM感受性と有意差を持って相関した。一方、5FU感受性因子であるTS,DPD,OPRT発現とは相関関係を認めなかった。そこで本研究の主眼をRRM1発現に絞り、解析を進める事とした。胆道癌で手術を行い、その後再発をきたしGEM治療を行った症例を対象に組織中RRM1発現解析を行った。さらに、組織中RRM1発現を定量的に解析し、GEMの効果と比較・検討した。本結果は、RRM1を指標としたGEM個別化抗癌剤治療の実現へ繋げる重要な知見を見いだしたと思われる。 しかしながら、当初企画していたS-1感受性因子解析は予想に反し、感受性因子との相関が得られなかった。したがってS-1+GEM併用療法の個別化実現の基礎的知見を完全に得ることはできなかった。 今後は胆道癌組織を用いたS-1感受性因子のタンパク解析を行う必要があると考えている
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