研究課題
通常では発生過程の未分化細胞や幹細胞で高く発現する構造的クロマチン因子high mobility group Aタンパク質(HMGA)が、多くの癌で再活性化し癌化や転移能にそのエピジェネティックな機能をとおして作用するとされる。本研究では、その分子メカニズムとして、HMGA1タンパク質がretinoblastomaタンパク質(RB)と相互作用し、細胞が休止状態(GO arrest)となるのを阻害することを見いだした。1.具体的内容:HMGAIはRBのA,Bポケット構造部と相互作用してヒストン脱アセチル化酵素HDAC1と競合することにより、通常はRBにより抑制されるサイクリンEといったE2F標的遺伝子の発現を活性化させる。HMGA1の安定的過剰発現により、低血清状態で休止期に入るべき癌細胞が増殖を続け、さらに染色体不安定性を伴う核分裂異常像を呈した。2.意義:癌細胞は異常増殖に伴い、虚血や低栄養状態といった環境にさらされる。通常の細胞では休止期に入る状況においても癌細胞は分裂を続け、生き延び得るものが増殖し、進展していくとされる。本研究ではこの分子メカニズムの一つをHMGA1とRBの相互作用をとおして理解するものである。3.重要性:膵臓癌は乏血性の環境下で増大し、またHMGAタンパク質の再活性化がみられる。今後膵臓癌進展におけるHMGAをとおした病態の解明により、新たな治療の分子標的を提供することが期待できる。
すべて 2007 その他
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Cancer Science 98
ページ: 1893-1901
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/en/divisions/Medical_Cell_Biology/index.html