研究概要 |
「食道癌においてCCR7/CCL21 axisとリンパ節転移の関連について」 【結果】 (1)腫瘍組織において,CCR7 mRNAの発現量とリンパ節転移に関連はなく,他の臨床病理学因子との関連も認めなかった。免疫染色では, CCR7は腫瘍細胞質内および細胞膜に不均一に発現し,正常のリンパ球のおいても恒常的に発現していた。従って組織中のCCR7 mRNAの発現量には,リンパ球でのCCR7の発現量が含まれており,癌細胞固有のCCR7 mRNAの定量が必要であると考えられた。 (2)LCM法により選択的に回収した癌細胞におけるCCR7 mRNAの発現量を検討すると,リンパ節転移(-)群に比してリンパ節転移(+)群で有意に高値であり(p<0.05),免疫染色陽性例では,有意にCCR7 mRNAの発現量は高値を示した(p<0.05)。臨床病理学的因子の検討では,シンパ管侵襲を認める症例で,有意にCCR7 mRNAの発現量が高値を示したが(p<0.05),他の臨床病理学的因子との相関は認めなかった。 (3)CCR7 mRNAの定量値よりROCカーブを用いてcut off値を1。275に設定すると,sensitivity 61。9%, specificity 83。3%であった。臨床病理学因子とリンパ節転移の有無に関与する因子について単変量解析を行うと,リンパ管侵襲の有無(p<0。005),免疫染色陽性(p<0。05),CCR7高発現であることが有意にリンパ節転移の有無に関連していた(p<0。05)。多変量解析では,CCR7高発現はリンパ節転移の有無に関与する独立因子であった(オッズ比41。94,95%CI(1。45-1214。92),pく0。05)。 (4)pN(+)症例のリンパ節のCCL21 mRNAの発現はpN(-)症例よりも有意に低く(p<0.0001),pN(+)症例に限ると,転移(+)リンパ節が転移(うリンパ節より有意に低発現であった(p<0.0001)。免疫染色では,CCL21は主にリンパ濾胞の傍皮質内のHEVに発現し,転移リンパ節の腫瘍細胞周囲100μmでの発現は,500μmでの発現より有意に低値だった(p<0.0001)。よって転移が成立するとリンパ節におけるCCL21の発現が低下することが示唆された。 (5)転移リンパ節内の腫瘍細胞におけるCCR7の発現は,41症例155個のリンパ節中,わずか10症例12個に認めるのみであり,原発巣からリンパ管へ導かれた癌細胞がリンパ節内で転移を起こすと,CCR7の発現は低下し,転移したリンパ節からリンパ管へ導か 【結語】食道癌リンパ節転移におけるCCR7/CCL21 axisの関与が強く示唆された。
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