研究概要 |
(研究の背景と目的)進行胃癌の再発で腹膜播種の頻度は高く,その予後は不良である.手術中に腹膜再発の発現を予測できれば,術中・術後の治療にきわめて有用である.近年の分子生物学的アプローチの進歩により,CEA(carcinoembryonic antigen)あるいはcytokeratinを標的としたRT-PCR法による微小な癌細胞を検索する方法の有用性が報告されている.しかし,これらの方法は高感度であるものの,(1)個々の腫瘍細胞での発現量の違いが結果に影響する,(2)擬陽性例がある,(3)判定までに1-2時間程の時間を要する,などの欠点があり,実用性に問題があった.これらの欠点を解決し,腹腔洗浄液中の腫瘍細胞を正確に検出するためには,腫瘍細胞特異的なaberrant antigenを標的にした,迅速診断法の開発が必要である.本研究課題では,胃癌患者の腹腔洗浄細胞診材料において,がん細胞が表出しているaberrant antigenを標的とした術中迅速診断法の開発とその自動化を行い,臨床応用の妥当性を検証する. (方法)aberrant antigenとして胃癌で特異的に発現の見られるmaspinを標的にして,蛍光顕微鏡による解析を行った. (成果)本年度は,基礎的検討として,scanning cytometerで,有核細胞100-1000個を解析する自動化システムを開発した.その感度は細胞診の検出感度を上回り,定量PCRによる解析結果と相関した.方法論に関する論文を作成し,投稿中である.
|