本研究の目的は、癌において特徴的に見られる遺伝子特異的de novoメチル化形成のメカニズム解明である。癌遺伝子c-Mycが標的遺伝子p21プロモーター上にDNAメチル基転移酵素(DNMT)を誘引し、DNAメチル化によってp21の発現を抑制する事から、c-Myc等癌化に関わる転写因子が標的遺伝子にDNMTを誘引し遺伝子特異的にde novoメチル化の形成を誘導するという仮説を立てた。本研究ではc-Mycの過剰発現によるDNAメチル化の変化をgenome-wideに検出し、癌におけるde novoメチル化との関連性を検討する。当該年度は、まずヒト大腸由来正常上皮細胞へのc-Mycの導入を検討した。カチオン系樹脂による遺伝子導入では効率が悪かったためc-Mycを発現するレトロウイルスベクターを作製した。次にc-Mycをヒト大腸由来正常上皮細胞に過剰発現させDNAメチル化が誘導される時間等諸条件を検討した。現在、c-Mycをヒト大腸由来正常上皮細胞に過剰発現させた時に(1)DNAメチル化が誘導されるプロモーター、(2)c-Mycが直接あるいは間接的に結合するプロモーター、(3)発現変化する遺伝子の趨羅的解析をhuman promoter array及びhuman expression arrayを用いて検討している。再現性の確認やmicroarray解析の信頼性の向上のため条件検討等引き続き検討の余地はあるが、c-Mycによるgenome-wideなDNAメチル化の変化を明らかにし得るものと思われる。
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