研究概要 |
肝移植におけるドナー不足は我が国だけでなく、移植先進国においても極めて深刻である。従来使用不能と考えられている心停止ドナーからの肝臓が移植可能となればドナー不足におおいに貢献できると考えられる。心停止ドナーの肝臓のviabilityが不良でprimary graft nonfunction (PGN)をきたす原因は虚血・再潅流傷害にほかならない。したがって肝虚血再濯流傷害を抑制できれば、心停止ドナーからの肝移植が可能になると思われる。肝虚血再濯流障害のkey mediatorとして最近注目されつつあるのがインターロイキン-18(以下IL_18)である。IL_18は当初IFN-γinducing factorとして発見され、1996年にクローニングされた比較的歴史の浅い炎症性サイトカインであるが、肝虚血再濯流障害のみならず炎症性肝疾患の制御にIL-18阻害が重要な役割を果たす可能性は極めて高いと考えこの研究に着想した。 本研究ではわれわれがこれまでに確立してきたラット120分70%部分肝虚血モデルにおいて、遺伝子導入、人工肝臓治療の手法でIL_18結合蛋白(以下IL-18bp)を投与し、虚血再潅流傷害の抑制果を生存率、血液生化学検査、病理組織学的検査等の各種parameterを用いて虚血前、再濯流前、再潅流後60,180分後について検討する予定である。 IL-18bpを生体にdeliverするにはタンパク自体を投与するのがもっとも単純であるが、残念ながら本タンパクは現時点では極めて高価であり特に大動物実験、臨床応用には不向きである。そこでわれわれは本学分子生物学教室と共同研究で1)遺伝子治療技術を、米国マサチューセッツ州マサチューセッツ総合病院外科と2)人工肝臓治療技術を開発・確立した。
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