研究概要 |
前年度に整備した臨牀データベースを用いて選択したサンプルを用いて、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を実際に試みたが、結果的には成功しなかった。過去に胃癌、大腸癌、肺癌等では解析に成功していたが、膵臓癌の検体は繊維質に富み、癌細胞が集合して存在せず繊維の中にばらばらに存在するため、十分量の細胞数が採取できなかった。また他癌腫に比べ疾患の頻度が少ないため、症例数を確保するために、比較的古いサンプルまで検討に加えたが、古いサンプルではRNAの変性の度合いが強く、比較的長鎖のRNAを必要とするマイクロアレイでは質のよいRNAを抽出できなかったことも原因と考えられる。 そのため方針を変更し、遺伝子のターゲットを絞って、Real-time RT-PCRを用いた遺伝子発現解析を行うこととした。この方法では比較的少量の、変性の進んだRNAからでも測定が可能であった。測定遺伝子は抗癌剤Gemcitabineの感受性に関連するといわれる遺伝子、フッカピリミジン系薬剤関連遺伝子、葉酸関連遺伝子を10種類選択した。 測定を行った81症例中、59症例で測定が可能であり、その結果Dehydropyrimidine Dehydrogenase(DPD), および葉酸関連の3遺伝子において予後との関連が認められた。 この結果は本年4月に開催されるAmerican Association for Cancer Research(AACR)学会にて発表の予定となっている。また論文化も進行中である。
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