本研究は、我々が血管新生治療の研究に用いている血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)の動脈硬化性疾患に与える効果・影響についてin vivo及びvitro動脈硬化モデルを用いて検証し、PD-ECGFの血管新生療法における安全性を確認するとともに、動脈硬化性疾患に対する治療法への応用の可能性を追求することを目的とする。 平成19年度はin vitro動脈硬化細胞培養モデルにおける血管新生因子(PD-ECGF)の影響について研究を行った。 まず、ラットの大動脈血管平滑筋細胞を培養。この培地にアンギオテンシンII(Ang II)を添加し、動脈硬化環境とした。この状態にて増殖能、遊走能をそれぞれMTT assay、wound healing assayにて評価したところ、両者とも通常状態と比較し促進されていることが確認された。またmRNAレベルにて増殖関連因子Egr-1、KLF5や細胞活性化因子VCAM-1、ICAM-1の発現も促進していた。 これに対し、培地に血管新生因子であるPD-ECGFを添加した細胞では、細胞の増殖能や遊走能において抑制的に働き、上記の細胞増殖・活性化因子においてもAng IIの作用に対し抑制することが明らかになった。このことは本研究の目的であるPD-ECGFの動脈硬化性疾患に対する治療効果という点において、その裏付けとなるものであり、今後のin vivo実験に十分に期待を抱かせるものと考えられた。 今後は、その他の動脈硬化性因子に対するPD-ECGFの効果を評価することに加えその他の血管新生因子においても同様の検討を行い、併せてapoE KOマウス動脈瘤モデルを用いた大動脈瘤に対する遺伝子治療の開発へと研究を継続していく予定である。
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