【背景と目的】肺癌において、近年、分子標的治療が試みられ、thyrosine kinase阻害剤である、gefitinibやerlotinibが登場したが、その効果は一部のEGFR変異(あるいは増幅)のある症例に限られている。この結果よりも、今後非小細胞肺癌の遺伝子発現形式によって、治療の選択が行われる可能性がある。また、EGFRの他にも、細胞周期関連の遺伝子である、P27、SKP2、ERBB2、MYCといったものは、その発現が肺癌の予後と相関することが示されており、肺癌治療の標的となりうる。そこで、組織型、喫煙歴、性別などの臨床的背景による遺伝子背景の差異に関する調査や、他の分子標的治療剤の開発が求められている。今回、我々は、非小細胞肺癌における、MYC、SKP2、EGFR、ERBB2、MIFのコピー数をABI PRISM7700を用い、real-time quantitative PCRにより解析し、臨床的背景、特に喫煙歴との関連について解析する。【昨年度の実績】コントロールとなる遺伝子の探索:real-time quantitative PCRにおいては、その内因性コントロールの設定が重要であり、その基礎実験として肺癌細胞株の染色体検査、EGFRのFISHを行った。肺癌細胞株においては、常にeuploid染色体を認めなかった。【今後の方針】肺癌切除標本のprimary cultureにより、metaphaseの染色体解析を行い、euploidyな遺伝子座の候補を得る。PIK3RI、β-actinと合わせて3通りのコントロールを置くことにより、より正確な標的遺伝子のコピー数を計測することが可能と考えられる。肺癌患者の切除標本より調整した正常肺、腫瘍組織のDNAを、2重に匿名化した腫瘍バンクで保存している。そのDNAについて、下記のプライマーでABI PRISM7700を用い、real-time quantitative PCRを行う。EGFR、MYC、SKP2の他に、KRAS、TTF1、ALK、METについて、そのコピー数を測定する。各遺伝子コピー数と、性別、組織型、喫煙歴といった背景因子の関連を検討する。
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