研究概要 |
心移植時の摘出心臓の長時間心筋虚血は,再灌流後の心機能回復や生存率の危険因子と報告されており,長時間虚血耐性の心筋保護液の開発は,移植後心不全の回避と遠隔予後の改善に寄与すると考える.心移植後急性期の心機能低下の原因の1つに,虚血再灌流障害がある.近年,Rho及びRho-kinaseを介する経路が虚血再灌流障害に関与しており,Rho-kinase inhibior(RKI)の投与による臓器保護効果が報告されている.RKIを含む心筋保護液投与後に心摘出を行い,24時間保存後に血液交差灌流回路を用いて心機能評価を行い,再灌流障害に対するRKIの有用性を検討した.体重3.1±0.1kg,日本白色種家兎を使用.九州大学式心筋保護液(KU)にて心停止後,UW保存液(UW)を投与し,24時間1℃でUW中に保存した.R群(n=8)では,RKIをKUに0.1mg/kg,UWに0.1mg/kg,24時間保存のUWに0.5mg/kg投与し,RKI非投与群をC群(n=8)とした.血液充填したLangendorff回路(貯血家兎n=8)に,Support家兎(n=16)を用いて血液交差灌流し,120分間再灌流を行った.再灌流後の心機能をFrank-Starling曲線で評価し,冠動脈流量(CBF),摘出心臓の心拍数を2群間の比較検討を行った.再灌流後60分,120分での摘出心臓の心機能は,R群において有意に良好であった(p<0.01,p<0.01).再灌流後120分でのCBFは,R群で103.6±18.5ml/min,C群で56.7±35.Oml/min(p<0.01)であった.今後,血液サンプルより,CK-MB等の生化学検査や,病理組織標本での評価,また,RKIの有効性を証明するために,Myosin Light chainのリン酸化の程度の評価が必要であると考えられる.
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