一酸化窒素(NO)ドナーを用いた肺癌治療の開発を目的して研究を行ってきた。これまでNOドナーが低酸素環境下において、より強い細胞傷害作用を持つことが明らかになっており、平成19年度は肺癌細胞に対して最適なNOドナーを選択し、最適な投与方法(腫瘍内注入、経口投与)を明らかにすることを目的に研究を行った。in vitroでマウス肺癌細胞株3LL(ルイス肺癌細胞)、ヒト肺大細胞癌細胞株PC13、ヒト肺腺癌細胞株A549に対して、各種NOドナーを投与し、48時間後のcell viabilityをMTTアッセイにて評価した。抗腫瘍効果を発揮するNOドナーとして、中時間作用型のDETA NONOate(Cayman chemical)が適していることが分かった。DETANONOateの細胞障害作用は低酸素濃度(1%)下にて増強した。低酸素環境下でのNOドナーの細胞障害作用の増強は、主にNOの半減期の延長によるものと考えられた。 In vivoでのNOドナーの細胞障害作用を検討するために、実験動物中央研究所が開発した免疫不全マウス・NOD/SCID/γnullマウス(NOGマウス)を用いた。NOGマウスはT細胞、B細胞機能に加えてNK細胞機能も障害されている免疫不全マウスであり、従来の免疫不全マウスよりヒト腫瘍細胞の生着率が高く、転移巣を形成しやすいという特徴かある。NOGマウス背部皮下にPC13、A549が生着することを確認した。また経皮的に胸腔内に注入したPC13が縦隔リンパ節転移、対側胸膜転移を形成することを確認した。
|