これまで、我々は、順天堂大学医学部・病理・腫瘍学講座の樋野教授及び免疫生物研究所(IBL)との共同研究として、胸膜中皮腫の腫瘍マーカー(N-ERC/mesothelin、Osteopontin)の測定系(ELISA)の開発と臨床的有用性の検討(初期の検討)を行い、成果を公表してきた。 本年度は、さらに感度・特異度のいい新しいELISA(7-16)を開発し、多施設共同臨床試験の形で、中皮腫のみならず臨床的に非常に重要な鑑別疾患を多数集積した。この解析の結果、血液中のN-ERC/mesothelinが、中皮腫の腫瘍マーカーとして非常に優れていること(感度71-90%、特異度88-93%)を報告した(ClinCancerRes2008;14(5)March1:1431・1437。2001年度日本呼吸器外科学会。2007年度日本肺癌学会)。 今後は、実地臨床での使用を想定し、(1)N-ERC/mesothelinと他の腫瘍マーカー(Osteopontin、CA125、CYFRA、ヒアルロン酸)との組み合わせの検討、(2)胸水での検討(血液の比較も含む)、(3)他の癌腫や代謝・排泄に関わる疾患での血液N-ERC/mesothelin濃度測定、(4)東京土建組合との研究型検診による早期診断の可能性の検討、(4)発がんに関する遺伝子解析(LOHを含む)、中皮腫細胞と正常細胞での細胞膜表面ERC/mesothelin分子の違いを探索する。
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