研究概要 |
【研究内容】平成19年度はブタにおける各肺葉別リンパ流路の探索を行った。方法は(1)月齢3ケ月の豚を仰臥位全身麻酔下に分離肺換気し、開胸した後にインドシアニングリーンを標的肺葉に20〜25mg局注する。(2)経時的なリンパ節での変化(インドシアニングリーンのリンパ節への取り込みを蛍光画像として捉える)を近赤外線観察カメラシステム(Photodynamic Eye, PDE)で捕捉してゆく。(2)最終的に心肺(両側)を同時に摘出し、全てのリンパ節をその評価の対象として、リンパ節マッピングを行った。【結果と考察】(1)左右の前葉からは気管分岐部リンパ節へのリンパ流は無いものと考えられる。しかし前葉気管支周囲のリンパ節に転移があった場合は、リンパ流の遮断による気管分岐部リンパ節方向へのback flowが考えられる。よって前葉気管支周囲のリンパ節にセンチネルリンパ節が存在する可能性が示唆された。すなわち前葉気管支周囲のセンチネルリンパ節に転移が無ければ、気管分岐部リンパ節の郭清は省略出来るとする理論が成り立つものと思われた。(2)経時的にリンパ節を観察していったが、解剖学的にリンパ節の位置が深いなどの理由により、どのリンパ節がより早く蛍光を発したかは判別困難であった。今回の実験では気管リンパ節が前葉気管支リンパ節を経由しているのか、それとも前葉から直接の流路によるものなのか葉解らなかった。(3)左右の後葉は全例気管分岐部リンパ節での蛍光を認めたが、より中枢のリンパ節への流路はブタの解剖学的な問題もあり不明であった。(4)インドシアニングリーンやPDEによる観察が関連した重篤な合併症は経験されず、平成20年度で計画されている臨床応用への許容性と妥当性が示された。今後は臨床研究を通じ、肺癌外科手術におけるセンチネルリンパ節ナビゲーション手術の整合性を探求してゆく所存である。
|