研究概要 |
【背景】本邦では縦隔リンパ節郭清が予後の改善に繋がるとされ、ND2a以上の郭清が標準手術となっている. しかし欧米では根治的郭清とサンプリングによるRCTで2群間に予後の差はなかったと報告され、ステージングを目的としたサンプリングが中心となっている. 一方本邦では近年になって、原発肺葉別にリンパ節への転移形式をマッピングし、根治的リンパ節郭清する範囲を縮小する報告が出てくるようになった. この積極的縮小郭清が可能となれば、手術時間の短縮や合併症の抑制にも繋がるものと考える. その一つの方法がセンチネルリンパ節ナビゲーション手術であり、色素法やRI法による有効性が報告されている. 【目的】赤外観察カメラとインドシアニングリーン(ICG)による蛍光法で、センチネルリンパ節の同定とその妥当性について検討した. 【方法】術前に肺癌の確定診断が得られている原発肺葉にICGを局注し、リンパ節およびリンパ流路を観察した. またND2a以上の郭清を施行し、領域別にリンパ節をex vivoで観察した. 【結果】右上/右下/左上/左下が各々11/2/5/2で計20例に施行し、腫瘍径は15-120mmで平均41mm. 全例で一個以上のリンパ節を蛍光画像として観察可能であった. 病理病期はIA/IB/IDA/IIB/IIIA/IIIB/IVはそれぞれ3/8/1/1/5/1/1/1. pN1の3例のうち2例は転移リンパ節がセンチネルであったが、1例はセンチネルが陰性にも関わらず#14, #10が転移陽性であった. pN2の症例ではスキップ転移は存在せず、1群のリンパ節転移が全例に認められ、それらは全てセンチネルであった. 【結語】本方法は肺癌におけるセンチネルリンパ節の同定に有効であった. pN1で蛍光の無かったリンパ節に転移を認めたものがあったが、これはより腫瘍に近い#14への転移によってリンパ流路が変わったためかもしれない.
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