1.当院にて経験した発症時0-14歳までの小児髄芽腫症例(男17例、女6例)について分子遺伝学的検討を行った。DNAを抽出し、direct sequencing法にてPI3-kinaseのP110-alpha subunitにおける変異の好発部位であるexon 9と exon 20について調べたが、全例で変異は認められなかった。また、異なる増殖シグナル伝達を担うbeta-catheninの変異も認められなかった。現在、EGFRの増幅、ならびにPTEN遺伝子の変異について検索中である。 2.一方、成人の悪性脳腫瘍の代表である神経膠芽腫例では、105例のうち5例にP110-alpha subunitの変異を認め、さらに約3分の1の症例で、EGFRの増幅、PTENの変異などが認められた(文献)。今後、胚細胞性腫瘍、上衣腫などでも、PI3K経路の腫瘍悪性化機構、ならびに薬剤感受性などこついての検討を行う予定である。 3.脳神経外科浜田潤一郎教授、林裕准教授、中田光俊講師とともに、金沢大学関連病院間での脳腫瘍症例データーベースの構築を行い、2008年4月より運用開始となった。これにより脳腫瘍の治療法、治療成績、予後について、多施設間での検討が可能となった。 4.Apoptosis関連遺伝子として発見された遺伝子に、家族性の変異を持つ家系を発見した。家族性の脳腫瘍を認め、さらに小児期からの脳腫瘍が成長後に悪性化したものが含まれていたことから、当該遺伝子以外にも、何らかの遺伝子の変化がこの症例に起こったものと考えている。本人、および家族の同意を得た上で、当該遺伝子の癌化機構について現在調査を行っている。
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