研究課題
悪性脳腫瘍より得られた12の細胞株について、1)PIK3CA遺伝子変異、2)PIK3CA遺伝子増幅、3)PTEN遺伝子変異、4)EGFR遺伝子増1幅をそれぞれ検討した。1)については遺伝子変異は認められなかった。2)については、12株中6株(50%)で通常の2-5倍の遺伝子増幅をみとめた。3)については、12株中9株(75%)に何らかの遺伝子変異を認めた。4)については、遺伝子増幅を示す細胞株は認められなかった。これらの結果より、12株中10株(83%)にPI3Kシグナル伝達経路の遺伝子異常があることが明らかになった。この結果、同様の遺伝子変化を持つ脳腫瘍における抗がん剤感受性試験のモデルとなることが期待された。続いて、成人の神経膠芽腫、および小児脳腫瘍検体において同様の検討を行ったが、小児脳腫瘍では1)〜4)のいずれの遺伝子異常も認められなかった。そのため、上記細胞モデルは成人Gliomaへの検討に有用であることが判明した。続いて、Gliomaの薬剤感受性規定因子であるMGMTの遺伝子発現調節部位のDNAメチル化とMGMT mRNAの発現を検討したところ、非メチル化を示す検体ではMGMT mRNAの発現低下が認められることが明らかになった。脳腫瘍における、細胞内シグナル伝達機構や薬剤感受性に関わる遺伝子変化を検討し、小児悪性脳腫瘍を始めとする脳腫瘍全般に関する一定の知見を得た。また、神経膠芽腫において、715例/15年間のpopulation based studyを行い、1)年齢が上がるほどに治療機会が失われていくこと、(2)若年者の方が放射線感受性が高いこと、を示した。脳腫瘍についてのデータベースを作成し、石川県、福井県、富山県の20施設に配布し、データを収集中である。本データベースの充実により、小児悪性脳腫瘍を始めとする脳腫瘍全般に関する知見を得る準備ができた。
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