研究概要 |
近年、悪性脳腫瘍内に神経幹細胞と同様の性質を有する腫瘍幹細胞の存在が明らかとなり、その細胞生物学的な検討により腫瘍形成や悪性度、治療抵抗性に重要な役割を担っていると考えられる。様々な悪性脳腫瘍から採取した脳腫瘍のサンプルを無血清培地にて培養し浮遊細胞塊の形成を観察した。stem cell markerである、CD133やNestin、Musashilなどの免疫組織化学にて評価を行った。多分化能を蛍光抗体法により神経・グリア系マーカーである、GFAP、MAP2、TUJ1などを用いて検討した。FACSにてCD133陽性細胞とそれ以外に分離し、それぞれの多分化能と自己複製能などについて調査した。自己複製能については、doubling timeやMIB-1indexなどを指標にした。また、得られた病理組織標本においても幹細胞マーカーの発現およびその特徴を検討した。得られた悪性脳腫瘍において、tumor sphereの形成を確認し、Nestin,Musashi,CD133陽性細胞をほぼ全例に認めた。それぞれ多分化能を有しneural stemcell様の性質を持つことを確認した。また、病理組織標本では幹細胞マーカーの発現を腫瘍の一部に認めた。現在、当施設では悪性脳腫瘍よりCD133陽性細胞を分離・培養し、細胞上に発現する新規細胞表面抗原の同定する試みを行っているが、より高純度な幹細胞の分離・培養により脳腫瘍幹細胞の性質、治療抵抗性の解明や分子標的治療の可能性に寄与するものと期待する。また、自己複製能、薬剤及び放射線感受性に関与している予後不良因子を同定し、脳腫瘍に対するテーラーメイドな治療へ応用できることを期待するものである。
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