1、 小動物(ラット)を用い脳底部に設けた骨窓にcranial windowを設置し、人工髄液の灌流下(in vivo実験系)で脳底動脈の運動(血管径)を観察した。実験中はラットの血圧をモニターした。直腸温は温マットを用い37.0℃に、動脈血中CO_2濃度は人工呼吸管理にて40mmHg前後に調節した。 2、 Cranial window内に灌流させる人工髄液中にsphingosylphosphorylcholine(SPC)を混入させたところ、3〜300μMの範囲で濃度依存的に脳底動脈の収縮運動が認められた。また、SPC(100μM)が引き起こす血管収縮は、選択的Rho-kinase阻害剤であるY27632(10μM)の投与によってほぼ完全に抑制された。これらの結果から、SPCはin vivo実験系においてもRho-kinaseの活性化を介する脳血管の攣縮を引き起こすことが判明した。 3、 高コレステロール食(F1飼料に1%コレステロールと1%コール酸を添加)で飼育した高脂血症ラットを用いた実験ではSPC(100μM)が引き起こす血管収縮と血清コレステロール値には正の相関が認められた(相関係数 : 0.736)。これらの結果から、SPCが引き起こす血管攣縮機構はコレステロールによって制御されている可能性が示唆された。本研究はくも膜下出血後の脳血管攣縮のメカニズムの解明につながるものであり、コレステロールによる血管攣縮の制御機構の存在を示唆する結果が得られたことは臨床的にも極めて大きな意義を有すると思われる。
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