研究概要 |
1.グリオーマ細胞におけるp53遺伝子導入と生物学的効果の検討 p53遺伝子に変異を持つグリオーマ細胞株(U251)に野生型p53遺伝子を導入すると、p53のN端側のセリン残基(Ser6,9,15,20,33,37,46)がリン酸化され、劇的なアポトーシスを引き起こすことがWestern blottingおよびAnnexin V assayにより確認された。一方野生型p53遺伝子を有するグリオーマ細胞株(U87,D54)に野生型のp53遺伝子を導入しても、同セリン残基のリン酸化は起こらず、アポトーシスも誘導されなかったが、DNA障害性のストレス刺激として、放射線照射あるいはプラチナ製剤を追加投与したところ、同セリン残基がすべてリン酸化され、アポトーシスが誘導された。これによりp53のN端側のセリン残基のリン酸化がp53誘導性のアポトーシスに非常に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 2.グリオーマ細胞における53のリン酸化と標的造伝子の選択性の検討 グリオーマ細胞株において、p53のリン酸化により引き起こされるアポトーシスがどのようなpathwayを賦活化して誘導されるのかをWestern blottingにより確認した。アポトーシスを起こした細胞ではCaspase8および9がともに活性化されていたことより、death receptor pathwayおよびmitochondrial pathwayの両者がともに賦活化されてアポトーシスを引き起こすことが確認された。さらにその上流のp53標的遺伝子の発現をWestern blottingにより確認したところ、それぞれのpathwayを賦活化するFas、PUMAの発現量が有意に上昇していたが、Baxの発現量には変化を認めなかったことより、p53のリン酸化により特定の標的遺伝子が転写活性されることが明らかとなった。
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