脳動脈瘤が発生してから成長・破裂へ至る過程に血行力学的ストレスが如何に関与しているかを明らかにすべく研究を行った。特に成長=増大する過程に注目した研究を行い、成果をえた。 未破裂脳動脈瘤が経過観察中に破裂した症例の蓄積を続けた。そのうち3症例3動脈瘤で破裂前後の詳細な三次元画像が得られていたので本研究の対象とすることができた。これは長期間の経過観察と関係協力機関との連絡を続けることで可能となった。 脳動脈瘤の三次元形状を経時的に観察する方法は従来までは確立されていなかったが、本研究ではMutual information法を導入することで解決することができた。増大前後の動脈瘤三次元画像をMutual information法を用いてOverlayさせ、形状変化部位を明示できた。画期的な可視化と思われる。 治療前に撮像されていた三次元画像を元に脳動脈瘤内の血流解析を行い、動脈瘤壁に作用するせん断応力分布を可視化した。 動脈瘤増大部位と、壁面せん断応力を比較することにより、脳動脈瘤の増大は1.低壁面せん断応力部位に生じること、2.せん断応力値の勾配(Shear gradient)が大きなところに生じることの2つが明らかにされた。 本研究で動脈瘤の増大する部位が血流解析により予想しうることが示された。また、増大メカニズムには低せん断応力に関連する内皮細胞の機能障害が関与していることが示唆され、それらを抑制することで脳動脈瘤の増大を抑制できる可能性も示唆された。
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