研究概要 |
(目的)細胞外マトリックスのタンパク融解に関与するUrokinase plasminogen activator (uPA) systemを構成するuPARAP (uPA receptor associated protein)が悪性脳腫瘍であるグリオーマにおいて高発現し、またその浸潤能に関与しているという仮説に基づいて研究を行った。 (方法)SYBR greenを用いたquantative PCRで組織間、腫瘍間でuPARAPの発現を評価した。siRNAの手法を用いて、グリオーマ細胞株T98GにおいてuPARAPの発現をknock down する系を確立し、wild typeとknock down したものの浸潤能を比較検討した。 (結果)mRNAレベルでのuPARAPの発現は正常脳に比べて、グリオーマ検体において高い傾向が認められた。正常組織の中では心臓、精巣で高い発現を示した。グリオーマ細胞株(Marcus, U87, U251, T98G)の中では、T98G細胞株で最も発現が高く、正常脳の約5倍であった。 uPARAPに対してデザインしたsiRNAを用いてmRNAレベルでT98G細胞株におけるuPARAPの発現を約25%までknock downすることができた。 siRNAを用いてuPARAPをknock downしたT98G細胞株は、wild typeに比べて浸潤能が下がる傾向が認められたが、現段階でそれぞれの群の間に有意差を認めていない。 (結論と展望)uPARAPはグリオーマ組織において、正常脳及びその他の組織に比べて高発現していることが分かった。またuPARAPをknock downすることでグリオーマの浸潤能を抑制できる可能性が示唆された。
|