研究概要 |
脳動脈瘤の有力な機能的候補遺伝子であるLysyl Oxidase(LOX)遺伝子群に注目し解析を行った。5番染色体のLOX遺伝子については、先に我々が行ったゲノムワイド連鎖解析で連鎖を認めた5q31に存在していたので、すでに解析を終えているが、関連は認められなかった(J Hum Genet 48:309-314,2003)。現在までにLOXの4つのアイソザイムがクローニングされており、これらをコードするLOXL1〜4遺伝子にも注目してSNPs関連解析を行った。その結果、LOXL2、3遺伝子に疾患との有意な関連を見出した。そのうち、特に強い関連があったのが、LOXL2遺伝子のエクソン5に存在するSNPであった。このSNPは独立した危険因子ではなく、我々が先に見出したELN/LIMK1領域の関連SNPとの遺伝子間相互作用により脳動脈瘤発症にかかわっていることもMDR解析(multifactor dimensionality reduction analysis)により明らかにした(Hum Genet 121:377-387,2007)。次なるステップは、有意な関連を見出したLOXL3遺伝子領域の詳細な解析である。家族性脳動脈瘤患者185人対非脳動脈瘤対照439人での解析により、LOXL3遺伝子3'末端近傍で有意なアレル頻度差を示すSNPを同定できている。また、連鎖不平衡解析では、LOXL3遺伝子領域はひとつの大きな連鎖不平衡ブロックを形成していることが明らかになっている。すなわち、この領域には真の機能的原因SNPが潜んでいることを表している。今後の研究の主眼はこの真の原因SNPを突き止めることである。これと並行して、サンプルの臨床情報を利用した多変量解析を行えるようにするため、詳細な臨床情報の反集(年齢、性別や既往症、喫煙歴などのリスクファクター等)とそのデータベース化を行っている。
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