本研究は、慢性疼痛モデルラットの末梢神経にガンマナイフ(GK)を照射し、GK照射が疼痛行動に与える影響を検討し、末梢神経の組織学的変化を同時に解析する事で、ガンマナイフの三叉神経痛に対する治療効果発現のメカニズムの解明の手がかりを得る事が目的である。昨年度は、慢性疼痛モデルラットにおけるガンマナイフ照射方法を確立した。さらに、行動学的解析において、正常な神経へのGK照射は疼痛反応に影響を与えず、損傷神経への照射のみ鎮痛効果を示すことを明らかにした。本年度は、ウエスタンブロット法及び免疫染色法によりガンマナイフ照射後の坐骨神経の影響を組織学的に検討した。まず坐骨神経において、LigationによりマクロファージのマーカーであるIba1タンパク質が増加することを確認した。免疫染色においてもIba1陽性のマクロファージのLigation部への集積が認められた。Ligation7日後にGKを照射し、2週間後の坐骨神経のIba1発現量を検討したところ、Ligation群へのGK照射ではさらにIba1タンパク質が増加することが明らかとなった。また、免疫染色法によりLigation部よりdista1側のマクロファージが顕著に増加することが明らかとなった。一方、sham群へのGK照射では、マクロファージは増加しないことが明らかとなった。本研究において、正常な神経にGKを照射した場合と、損傷した神経にGKを照射した場合とでは、行動学的にも、組織学的にもGK照射による応答が異なることが明らかとなった。損傷神経でのみGK照射により鎮痛効果が得られ、マクロファージが顕著に増加することから、マクロファージが鎮痛効果に何らかの形で関与している可能性が考えられる。また、損傷神経でのGK照射の影響を詳細に検討することは、ガンマナイフの鎮痛効果のメカニズム解明へと繋がると考えられる。
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