我々は脊権手術において、生体に対し低侵襲に行うべく各種機器を駆使し、様々な工夫を行っている。特に腰椎後方除圧手術においては、脊柱起立筋の剥離法や、脊柱後方支持組織である骨や黄色靭帯の削除に対して工夫を行い、比較検討することによって、最も侵襲の少ない方法を明らかにすることができた。このような、腰椎への後方除圧手術によって腰椎黄色靭帯組織を摘出し、靭帯をホルマリンで固定後、切片を作成した。切片作成に際して、靭帯内に認められた石灰化の処理に難渋したものの、様々な工夫を行うことによって十分量の検体及び切片を確保することができた。得られた黄色靭帯組織切片を、HE染色を行い観察したところ、靭帯の変性とともに血管の新生が確認された。靭帯の変性は比較的び慢性に起こっていたが、変性の程度は組織によって様々であり、靭帯の変性の程度と血管新生の程度とは必ずしも相関しなかった。しかし、血管新生が多いもので概して靭帯の変性が強く、両者の関連性が示唆された。黄色靭帯は変性に伴いその弾性が失われ、その結果新生した血管の断裂がおこることが知られているが、血管断裂に伴う靭帯内出血は多くの靭帯組織で観察することができなかった。更に、黄色靭帯組織切片を血管のマーカーであるCD34を用いて免疫染色を行ったところ、新生された血管の分布を明瞭に確認できた。以上の結果を踏まえ、今後は継続して低酸素関連因子であるHypoxia inducible factors(HIF)やVEGFなどの蛋白や遺伝子発現について検討を行う予定である。
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