昨年度から引き続き、間葉系腫瘍におけるFUS1遺伝子と蛋白の発現について解析を進めてきた。3種の正常線維芽細胞株と、8種の骨肉腫細胞株を含む17株の間葉系肉腫細胞株におけるFUS1遺伝子発現をRT-PCR法にて解析したところ、すべての細胞株においてFUS1 mRNAの発現が確認された。同様に臨床検体より採取した16種の正常間葉系組織と11の骨肉腫を含む138検体の間葉系腫瘍組織におけるFUS1遺伝子発現の検討においても、悪性線維性組織球腫の2組織を除くすべての正常及び腫瘍組織におけるFUS1 mRNAの発現が確認された。一方で、前記の計20株の細胞株におけるFUS1の蛋白発現について抗FUS1抗体を用いたWestem blot法にて解析したところ、すべての正常線維芽細胞株と、骨肉腫や悪性線維性組織球腫などの約半数の肉腫細胞株において発現が確認された。しかし、Tissue Micro Arrayによる免疫組織染色法を用いた、間葉系の正常および腫瘍組織におけるFUS1蛋白発現の解析では、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫と平滑筋肉腫のそれぞれ1検体を除くほぼすべての組織において発現が認められなかった。さらに、7種の骨肉腫細胞株を用いて、FUS1遺伝子導入により各細胞株にFUS1蛋白を強制的に発現させ、細胞増殖抑制効果やアポトーシスの誘導作用などについて検討したが、ごく一部の細胞株を除き、明らかな抗腫瘍作用は確認できなかった。骨肉腫を含む間葉系腫瘍に対して、FUS1遺伝子が癌抑制遺伝子として有効に作用するかどうかについては、引き続き検討を行う必要があると考えられた。
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