【目的】近年MRIの磁化移動効果を利用した組織の定量的評価が報告され、我々は骨軟部腫瘍領域におけるMagnetization Transfer Ratio (MTR)が腫瘍組織の悪性度や化学療法効果判定の有用なパラメータとなることを報告した.本研究は腫瘍組織のcellularityをより鋭敏に反映するEquivalent Cross-relaxation Rate imaging (ECRI)の研究へと継承されている.骨軟部腫瘍領域においてECRIと病理学的評価とを対比することにより、ECRIが局所浸潤性を評価する補助診断法になりうるか検討し報告する.【対象・方法】2007年4月より現在まで当科を初診しECRIおよび病理学的評価をし得た上下肢の骨軟部腫瘍10例を対象とした。off set周波数は7および19ppmを設定し以下の3項目について測定した.1)最小関心領域を使用し腫瘍実質部分の測定2)全体のtracingを行い腫瘍全体の平均値の測定3)腫瘍実質および周囲を測定しECRIのmapping【結果】1:腫瘍組織の悪性度に応じたECR値を示した.2:細胞密度の高い良性腫瘍との鑑別は困難であった.3:ECRIは軟部肉腫の筋肉や骨への浸潤の評価に有用であった.特に脂肪組織との識別は明確で、皮下での浸潤性腫瘍や追加広範切除の浸潤性の評価に有用であった.【考察】骨軟部腫瘍は悪性線維性組織球腫に代表されるように浸潤性発育を特徴に持つ.その術前評価にMRIは欠かせない.しかし自由水プロトンを主に反映するため周囲の浮腫により腫瘍の辺縁の評価が困難となることを多く経験する.ECRIは腫瘍の定量的評価を画像にしたものであり、術前に腫瘍組織の周囲への浸潤性の定量的評価の可能性が示唆された.病理学的対比によりその有用性が証明されれば、骨軟部腫瘍領域では必要不可欠な補助診断法となりうる.
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