研究概要 |
本年度は体性感覚誘発磁界の研究として, 手指の触圧覚に関する研究と, 脊髄機能の評価を目的とした, マウス脊髄損傷モデルを用いた研究を行った. また, 臨床に関連した研究として, 脊髄障害に関する電気生理学的研究を行った. 1. 機械受容器刺激に関連する体性感覚誘発磁界の計測 被検者に対し, 昨年度作成した機械受容器刺激器を用いて刺激を行い, ニューロマグ社製306チャネル脳磁計を用いて体性感覚誘発磁界(SEF)の計測を行った. また, 被検者の頭部MRIより脳を三次元構成した. 得られた磁界データより, 三次元構成したMRI画像に電流源推定を行い, 電気刺激後のSEF計測のデータと比較した. 電気刺激が様々な感覚神経に由来する反応を含んでいるのに対し, 機械刺激器を用いた計測では, 触圧覚, 温痛覚など, 個々の感覚神経に由来する反応をとらえることができた. 2. 動物実験モデルに対する電気生理学的検査 マウス脊髄損傷モデルを作製し, 細胞移植を行った後の脊髄機能評価の目的に経頭蓋電気刺激筋誘発電位を計測し, 機能障害の程度を評価した. 3. 臨床応用 1) 圧迫性頚髄症, 胸髄症における脊髄機能障害の評価 圧迫性頚髄, および胸髄症における術前の運動誘発電位計測を行い, 日常診療で問題となる, これらの疾患の鑑別が可能であることを証明した. 2) 外傷後の感覚障害の評価 外傷により手指感覚障害を来した症例に対して, 術前, 術後に機械受容器刺激および電気刺激によるSEFの計測を行い, 治療効果の判定を行った. 3) 上肢異常感覚のある頚椎症性脊髄症あるいは神経根症における痛みに関連するSEFの検討 上肢異常感覚のある頚椎症性脊髄症あるいは神経根症に対し, 正中・尺骨神経電気刺激によるSEFの計測を行い, 痛みに関連する成分の解析を行った.
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