破骨細胞は、細胞融合によって大型の多核細胞を形成する。しかし細胞融合を制御する分子機構やなぜ多核化するのか、ということについては長らく不明であった。私は7回膜貫通型受容体蛋白であるDC-STAMPが、破骨細胞の細胞融合に必須であることをDC-STAMP欠損マウスを用いて証明した(J Exp Med. 2005)。しかし、DC-STAMP4)リガンドやDC-STAMPを介した細胞融合機構は未だ不明のままである。そこで、本研究ではDC-STAMPのリガンドの同定、およびDC-STAMPを介した細胞融合機構を解明することを目的とた。DC-STAMPを全身性に恒常的に発現するDC-STAMPトランスシェニックマウス(DC-STAMP Tg)を作製し、DC-STAMP欠損マウスと交配したところ、DC-STAMP欠損マウスにおける破骨細胞の細胞融合不全を完全に回復した。DC-STAMP Tgマウスでは破骨細胞は細胞融合が亢進していたが、異所性の細胞融合はなく、DC-STAMPは細胞種特異的に細胞融合を制御することが明らかとなった(Biochem Biophys Res Commun 2008)。また、DC-STAMPのリガンドの候補として複数の7回膜貫通型蛋白に結合するリガンドであるMCP-1について解析を行った。MCP-1は同じMCPファミリーの中で最も強く破骨細胞に発現していた。MCP-1欠損マウス由来の破骨細胞は細胞融合が有意に抑制されていたが。破骨細胞の分化培養系にMCP-1を添加すると多核の破骨細胞の形成が回復したことから、MCP-1のDC-STAMPのリガンドとしての機能は見出せなかったものの、破骨細胞分化を誘導する機能を見出すことが出来た(Biochem Biophys Res Commun in press)。
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