研究概要 |
4週齢および160週齢の家兎を使用し、経年的組織学的変化の半定量的評価を行った。また脊索細胞の有無、比率を検討した。TIMP-3の免疫染色およびTIMP-3,ADAMTS4,5,TGF-β1の発現をRT-PCRを用いて評価した。またTGF-β1およびIL-1β刺激培養下でのTIMP-3およびADAMTS4の発現をRT-PCRで評価した。4週齢の家兎椎間板はヒトでは胎児から2歳に相当し、160週齢の家兎は11歳から16歳に相当した。160週齢の髄核では細胞数の減少が認められ、髄核における脊索細胞の比率は66%であった。 TIMP-3免疫染色では、4週齢の髄核および線維輪細胞の両方でTIMP-3が陽性であったが、160週齢ではTIMP-3の染色を認めなかった。4週齢のTGF-β1、TIMP-1,2,3,mRNAの発現は髄核において線維輪よりも有意に強く発現していた。 TGF-β1とTIMP-3mRNAは4週齢と比較して160週齢において有意に低値を示したが、ADAMTS4のmRNAの発現は4週および160週齢で明らかな差を認めなかった。 ADAMTS5のmRNAは両群とも検出されないかった。 TIMP-3のmRNAの発現はTGF-β1添加により容量依存的に増加したが、IL-1βの影響は受けなかった。一方、ADAMTS4のmRNAの発現はTGF-β1添加の影響を受けなかったが、IL-1β添加によって増加した。以上の結果より、家兎椎間板組織においても加齢によりヒトとほぼ同様な組織学的変化が生じ、160週齢の家兎椎間板組織には脊索細胞が残存するものの、その数は著明に減少し、脊索性髄核から線維軟骨性髄核への移行時期と考えられた。脊索性髄核にけるTIMP-3の発現は160週齢において4週齢と比較して有意に少なく、その一因としてTGF-β1の発現低下が考えられた。脊索性髄核から線維軟骨性髄核の移行期には、ADAMTS4の発現上昇が生じる以前にTGF-β1の低下に伴うTIMP-3の減少が生じ、ADAMTS4/TIMP-3比の不均衡が生じる可能性がある。 したがって脊索性髄核はTGF-β1とTIMP-3を発現することによって椎間板の恒常性維持に寄与している可能性があることが示唆された。
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