研究概要 |
本年度は人椎間板変性所見の画像的検討を継続し、手術例の長期経過における椎間板変性の特徴を検討した。L4変性すべり症で5年以上経過観察可能であった72例を対象とし、術前、術後5年時の単純X線を用いて、上位隣接椎間(L3/4)の画像上の隣接椎間病変(ASL)を評価した。ASLは3mm以上のすべり進行または術前比20%以上の椎間板高減少と定義した。72例中14例(19%)にASLが発生した。ASL、あり群は、平均56歳、性別(男0例,女14例)、術式(ALIF7例,PLIF7例)、椎弓傾斜角119±4゜、術前の椎間板変性(あり8例,なし6例)、固定椎間前湾角15±7゜、固定椎間高差2.2±3.1mmであった。ASLあり群はなし群と比較し女性(p<0.01)および術前の椎間板変性あり(p<0.001)が有意に高かった。過去にASLに関与すると報告されている項目のなかで、L4変性すべり症固定術後のASL発生に最も影響を及ぼす因子は、術式や手術手技に関連した因子ではなく、術前から存在する椎間板変性と性差が関与していた。そこで、性差に注目した基礎実験としてエストロゲン受容体α(ERα)を欠損したマウスの椎体軟骨終板を組織学的に検討した結果、ERα欠損マウスでは軟骨細胞が減少しその軟骨終板の厚さの減少、細胞外器質の減少が見られた。in vitroの結果では、野生型ではエストロゲンもしくはTGF-β添加でII型コラーゲンの発現が増加したもののERα欠損マウスにおいてはその増加が見られなかった。さらにレポーターアッセイを用いてII型コラーゲン発現調節機構を詳細に検討した結果、dominant negative型ERαやp38 mitogen-activated protein kinase (p38 MAPK)の阻害剤でII型コラーゲンのプロモーター活性は抑制されることを見出した。
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