本研究の目的は、パールカンの脊椎及び椎間板の発生機序への重要性を示すことである。本研究では、2つの課題を検討している。胎生早期の体節形成のシグナル制御の異常と胎生後期の骨化シグナルの異常である。パールカンノックアウトマウスは、約40%がE10.5日頃に死亡し、残りは周産期に死亡する2峰性の致死性を呈する。パールカンの機能欠損による椎体の異常にも2つの大きな原因の存在を検討する必要がある。早期致死の発症機構は未だ解明されておらず、パールカンの神経管並びに体節の分化への作用に着目して検討する予定である。胎生後期の骨化シグナルの異常については、申請者がパールカンの長管骨における内軟骨性骨化での役割を検討してきた手法を用いて、その脊椎における役割について解明する予定である。平成19年度は胎生後期の骨化シグナルの異常についての解析を進めた。胎生16.5日のパールカンノックアウトマウスの脊椎は、野生型と比べ顕著な側彎変形を呈していた。組織学的には、この時期野生型では椎間板形成が完了しているところ、パールカンノックアウトマウスではそれが低形成で加えて偏心性であった。胎生早期の体節形成シグナル制御におけるパールカンの関与については、今年度は充分なサンプルが得られなかったため、次年度にこれを実施する予定である。次年度はさらに、パールカンノックアウトマウスの脊椎における内軟骨性骨化の異常についても、軟骨及び椎間板形成過程におけるFGFシグナルや血管進入に焦点を絞り解析を継続していく予定にしている。
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