本研究では、SST-REX法(Signal Sequence Trap based on Retroviral Expression)という分泌型蛋白質のスクリーニング法として極めて有効な手法を応用し、軟骨細胞の分化にあずかる分泌蛋白因子の網羅的な同定を試みた。マウス肋軟骨骨端成長軟骨からレトロウイルスライブラリを作製し、前もって予想された細胞外軟骨基質を構成するprocollagen type II alpha 1 chainおよびprocollagen type 1 alpha 2 chainをPCR法にて検出・除外した後、313クローンをシークエンシング・相同検索し、約60種の分泌型蛋白の発現を同定した。このうち、Insulin-like Growth Factor Binding Protein 5 (IGFBP5)およびDentin Matrix Protein 1 (Dmp1)の発現を、3週齢マウス骨端軟骨を用いた免疫組織染色法、および軟骨細胞の各分化段階にある軟骨細胞分化モデル細胞株ArDc5細胞より抽出したRNAを用いたRT-PcR法によって詳細に検討したところ、IGFBP5は増殖軟骨細胞特異的に、またDmp1は肥大軟骨細胞特異的に発現していることを突き止めた(論文執筆中)。また、本方法により合わせて検出される膜蛋白質として、Fibroblast Growth Factor Receptor type 5 (FGFR5)の骨端成長軟骨での強い発現を見出した。このチロシンキナーゼ活性を有しない特徴的なFGF受容体が、軟骨細胞分化調節において果たす役割について明らかにするために、福島県立医科大学・山本雅哉講師とともに共同研究を開始した。 今後、ATDC5を用いて、これらの分子のRNAi法によるノックダウンや蛋白成分としての培地への添加・および遺伝子導入による過剰発現によって、軟骨細胞分化調節にあずかる機能解析を行っていく。
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