研究概要 |
TNF-αは関節リウマチを始め種々の病態で重要な働きをする炎症性サイトカインである。この因子ははじめ細胞内で膜結合型として産生され,特定のタンパク分解酵素によるsheddingによって遊離型となり種々の生理活性を発現する。平成19年度はTNF-αと種々のタンパク分解酵素を共発現される手法によってこの分子に対するsheddaseを2段階のスクリーニングによって同定した。 第1段階のスクリーニングではTNF-αのsheddaseによる切断部位(stalk region)とalkaline phosphataseのキメラタンパクをタンパク分解酵素とHEK293細胞に共発現させ,培養上澄中のalkaline phosphataseの活性を定量するという手法によってstalk regionを切断しうる酵素を特定した。この実験では試みた合計23種のタンパク分解酵素の中でADAM9,10,17,MMP7,MT1,2,3-MMPの7種がキメラタンパクに対するsheddase活性を示した。この結果をwild type(全長型)のTNF-α確認するためにキメラタンパクではなくwild typeのTNF-αとこれら7種のタンパク分解酵素をHEK293細胞に共発現される実験を行ったところ、ADAM9、10、17およびMT1-MMPが実際に全長型TNFに対してもsheddase活性を持つことが確認された。これらの知見は従来TNF-αのsheddaseとして知られるADAM17以外の酵素もこの分子の可溶化に関与している可能性を示すものである。 平成20年度はこれらの知見を元に実際の病的状態でADAM17以外の3種のタンパク分解酵素がsheddaseとして関与しているかを検証する予定である。具体的にはまず関節リウマチと自己免疫性血管炎の2っの病態に着目し,適切な株化細胞とこれらの疾患に罹患したヒト組織を用いた解析を予定している。
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