研究概要 |
腫瘍壊死因子(TNF-α)は膜結合型タンパクとして合成され,これが切断されて可溶型分子となる.この切断は特定のタンパク分解酵素により行われ,TNF-αの生理的な作用の発現には切断の有無が極めて大きな影響を与える.従来の報告でこの切断はADAM17により行われるとされてきたが,このサイトカインが多種の細胞により産生されることを考えると,どのような細胞においてもADAM17が重要であるかは不明である.TNF-αに対する切断酵素を同定するために研究代表者は独自の系を構築して検討を行い,ADAM17のほかにADAM9,10,19が膜結合型のTNF-aに対する切断活性を持ちうることを明らかにした.ついで研究代表者らはRNA干渉の実験によりHEK293A細胞においてADAM10とADAM17がTNF-αに対する切断酵素であることを確認した.さらにマウスから得たマクロファージにおいてADAM17以外にADAM10もTNF-αに対する切断活性を持っていることを確認した.研究代表者らはさらにNIH3T3細胞ではADAM17よりADAM10のほうがTNF-αの切断において重要であること,マウスの血管内皮細胞由来のUV♀2細胞ではADAM10とADAM17が同等に重要であること,変形性関節症に罹患した軟骨細胞ではADAM10よりADAM17が重要であることをそれぞれ示した.またこれらの細胞におけるADAM10,ADAM17,TIMP1,2,3の発現レベルの検討から,それぞれの細胞においてTNF-αの切断にADAM10とADAM17のいずれが重要化を決定する因子として酵素自身の発現レベルとともにTIMPの発現レベルが関連することを見出した.
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