アドレノメデュリン(ADM)は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)ファミリーと呼ばれる神経ペプチド群を構成する代表的な物質であり、ショック、エンドトキシン血症、心不全、心筋虚血などの心血管系が障害される病態において血中に分泌され、生体のホメオスターシスの維持に重要な役割を担っている。その作用は、血管拡張、陽性変力作用、抗炎症作用、心筋保護作用など多岐に及ぶ。特に、血管拡張、陽性変力作用の作用機序は、Gs-adenylate cyclase-cAMP系であり、麻酔薬により抑制される可能性がある。本研究では、ADMによる心血管系への作用に及ぼす、揮発性麻酔薬の影響を、中枢破壊ラット(pithedrat)で検討し、さらに、細胞内情報伝達系への影響を培養細胞を用いてin-vitroで検討し、その作用機構を解析した。中枢破壊ラットにおいては、麻酔薬投与群として、セボフルランを投与しておき、外因性にADMを投与し血管拡張反応を起こし、平均血圧、心拍出量、血管抵抗、心拍数を測定した。その結果、セボフルランはADMによる血管拡張作用および陽性変力作用を抑制し、両作用に共通する作用機序であるGs-adenylate cyclase-cAMP系を抑制していることが示唆された。さらに、ヒト神経芽細胞腫由来の培養細胞(SK-N-MC)をADMで刺激したときの細胞内cAMP産生に及ぼすセボフルランの影響を検討し、さらに、adenylate cyclase activatorであるforskolin、及びGs protein activatorであるcholera toxinによる細胞内cAMP産生に及ぼす麻酔薬の影響、1251で標識したリガンドの受容体への結合に及ぼす麻酔薬の影響を検討中でありこれらの結果より麻酔薬の抑制部位のさらなる詳細な機序が明らかになる可能性がある。
|