研究概要 |
本研究の目的は、GABAの合成が抑制されたマウス(以下GAD65-/-mouse)において、各種鎮痛薬の作用を行動・電気生理学的手法を用いて調べ、痛覚情報伝達におけるGABAの役割(脱抑制)と、麻酔・鎮痛薬のシナプス修飾作用における前終末からのGABA releaseの関与について明らかにすることである。 (方法)急性侵害刺激(熱刺激)に対する疼痛行動反応の違いをWTと比較した。逃避の潜伏時間:52度のhotplateの上で後肢をなめるまでの時間や、hot water immersion testにより、尾の逃避反応時間を計測した。さらに、この反応に差があれば、炎症性疼痛(ホルマリン)や神経因性疼痛への反応の違いも測定する。ホルマリンテストでは、後肢の足背にホルマリン(5% formalin,20-50uL)を注射して(針は27-30G)、その後1時間にわたって、5分間隔で(1分後、5分後、10分、60分まで)、振り回し行動(flinching)、舐める行動(licking)、足上げ行動の回数などが観察された時間をカウントし、WTとGAD65で比較した。 (結果)Hot-plate上での逃避反応時間は、GAD65-/-mouseでWTより有意に短縮しており、侵害受容反応において野生型と差が見られた(P<0.01)。しかし、water immersion testでは、この有意差はなかった。 (考察)脊髄反射を介する逃避反応には差は無いが、上位中枢を介する逃避反応に差があったことから、GABA合成酵素の抑制による、抑制シナプスのGABA release probabilityの違いが、侵害受容反応に重要であることが示された。
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