本研究の目的は、肥満患者に認められる口腔内軟部組織の増加を非肥満患者で再現することで肥満患者に認められる上気道閉塞のメカニズムを病態生理学的な観点から明らかにし、肥満患者で考えられる口腔内容量増加による上気道閉塞に対しての有効な対処方法を明らかにすることである。 肥満患者の上気道閉塞部位を検討するために、小児の睡眠時呼吸障害患者を対象に肥満群・頭蓋顔面奇形群・コントロール群にわけ、全身麻酔筋弛緩薬投与下に無呼吸の状態で気管支鏡下に咽頭部の静的閉塞圧を測定した。この結果、肥満小児ではアデノイド・口蓋扁桃部だけでなく、コントロール群に比較して特に軟口蓋部で静的閉塞圧が高いことが示された。以上から、肥満は軟口蓋部での閉塞性を増加させると考えられた。 このため、上記の結果を再現するために、前段階の実験として、ラットの軟口蓋部にシリコンを注入し、口腔内軟部組織増加による上気道閉塞ラットモデル作成を試みた。しかし、この場合、研究対象の小ささに伴う手技上の難しさと、その解剖学的な構造や睡眠時の体位の違いなどから、動物モデルの作成は成功しなかった。このことから、人間を対象とした本研究の重要性が支持されることとなった。 以上を踏まえ平成19年度は、肥満による上気道閉塞を、全身麻酔が予定される手術患者の口腔内にバルーンを置くことで口腔内軟部組織の増加を再現し、肥満患者での上気道閉塞モデル作成をすることを目標とした。
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