研究概要 |
我々は、計算機を用いた分子シミュレーションにより光学異性バルビツレートのアセチルコリン受容体結合部位を探索し、(R),(S)の結合様式から結合部位における光学異性麻酔薬の分子認識の特性を解明した。アセチルコリン受容体の構造は2BG9(Protein DataBank)を用いた。麻酔薬は(R)-pentobarbital((R)-PB),(S)-pentobarbital((S)-PB),barbital(Barb)を用いた。結合探索と結合エネルギーの計算はMOE2007.9(CCG,Canada)で作動するASEDock2005(RyokaSystem)を用いた。(R)(S)-PBはいずれも膜界面に接する部位に結合した。Barbは細胞外開口部に結合した。(R)-PBと(S)-PBの結合様式を比較すると、バルビツール酸の骨格構造はほぼ重なり、アルキル部分が重ならなかった。このことから、主たる結合力はバルビツール酸の骨格構造であり、アルキル基部分の結合への寄与は小さいものと推定された。光学異性体をもつ麻酔薬の中には不斉炭素から離れた構造が受容体との結合に深く関与するものがあり、それらの麻酔薬ではキラリティは麻酔効果に影響しないことが示峻された。
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