研究概要 |
内因性心筋保護機構として重要な役割を持つAktのkinase活性制御機構に関して、Akt分子の活性部位近傍に存在するCys297およびCys311に着目し、これらのシステインSH基の酸化還元状態によるAkt kinase活性の制御機構について解析した。wild type Aktに加え、Cys297およびCys311をセリンに置換した各種mutant Akt発現ベクター(cAkt-C297S, cAlkt-C311S, cAkt-C297, 311S)をそれぞれH9c2心筋芽細胞に導入し、wild type AktおよびmutantAktを細胞内に一過性に発現させた。遺伝子導入48時間後に100μMの過酸化水素による刺激を行った。免疫沈降法により回収した検体を用いて、Western blot法により一過性発現させたAktのリン酸化の状態について解析した。wild type Aktは内因性Aktと同様に過酸化水素による刺激に反応してリン酸化されたが、変異Aktはいずれもリン酸化を生じなかった。次にAktによりリン酸化されることが知られているGSK3α/βを基質として用い、過酸化水素による刺激後のwild type Aktおよびmutant Aktのkinase活性を調べた。その結果はAktのリン酸化状態と一致しており、過酸化水素投与後にwild type Aktのkinase活性は増加していたが、mutant Aktでは変化を認めなかった。以上の結果より、心筋保護機構に重要な役割を示すAktのkinase活性制御機構にAkt分子のCys297とCys311の酸化還元状態が重要な役割を持つことが示唆された。
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