古くからマリファナには痛みを和らげる効果が知られていた。1960年代に活性成分であるΔ-9-テトラヒドロカンナビノールが同定され1990年代に入ると内在性カンナビノイド受容体CB1受容体が単離された。しかし、疼痛に関わるメカニズムは疼痛中枢のいくつかでカンナビノイドが明らかにされているのみで未だ解明されていない。 末梢からの侵害情報は脊髄後角、特に膠様質(substantia gelatinosa : SG)ニューロンに入力し、様々な修飾を受けた後、最終的に一次体性感覚野に投射する.そのため脊髄後角をターゲットとした鎮痛-脊髄鎮痛-は効果的な鎮痛法であり、CB1受容体は脊髄に多く存在するためCB1受容体を介した脊髄鎮痛が得られる可能性がある。そこで、実際の痛み刺激が脊髄でのシナプス応答に与える影響をパッチクランプ法で調査した。 In vivoパッチクランプを行ったところ、CB1作動薬の投与によりEPSCの頻度、振幅ともに増加するもの、減少するものと様々であった。パクリタキセル投与によって生じた末梢神経障害ラットにおいては自発および寒冷刺激に誘発されるEPSCが増加していた。ACEAの灌流により自発、誘発EPSCはともに抑制された。 これらの結果からカンナビノイドによる鎮痛効果の発現機序はカンナビノイドにより脊髄SGニューロンのEPSCが抑制されることで生じていると考えられた。カンナビノイドによるEPSC抑制が疼痛緩和の機序の一つとして存在していることが推測された。
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