脳浮腫の発症には、水チャネルであるアクアポリン4(AQP4)が関与していることがわかってきている。理論的には、脳浮腫が発生するような状況に陥った場合に、AQP4の機能を抑制すれば、浮腫の進行を制御して、神経学的な予後を改善できると考える。申請者は、昨年度までに細胞内情報伝達系であるP38MAPK(mitogen-activated protein kinase)と転写制御因子であるNF-κBがAQP4発現を制御している可能性を発見した。また、P38MAPKとNF-κBの阻害薬により、AQP4の発現を抑制し、AQP4の機能を低下させることを明らかにしており、これらの薬剤(AQP4発現阻害薬)の投与により浮腫の進行を制御できる可能性がある。そこで、in vitroにおける細胞浮腫評価系を確立し、AQP4発現阻害薬の脳浮腫抑制効果を確認することを目的とした。培養アストロサイト容積変化測定系の確立を試みた。AQP4発現阻害薬の脳浮腫抑制効果の確認を行うために、評価システム(=モデル)として培養Astを用いた単純で繰り返し実験できる系の開発を目指した。Astの膨張を脳浮腫のひとつの表現系ととらえ、細胞の容積を細胞内に取り込ませた蛍光色素の濃度の測定により数値化を試みた。カバーグラス上にAstを培養し、蛍光色1素であるカルセインを培養液に添加して細胞内へ取り込ませ、その後カルセインなしの培養液に戻す。倒立蛍光顕微鏡にカバーグラスをセットし、培養液を低張液にすばやく置換すると、細胞へ水が流入して容積が増加し、カルセインの蛍光強度が低下する。蛍光強度の変化率が細胞容積の変化率として計算できる。現在、ほぼ測定系は確立できており、今後の研究に適応していく予定である。
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