術後鎮痛における麻薬性鎮痛薬の鎮痛効果の必要量に個人差は大きい。痛覚への感受性を規定する遺伝子多型と麻薬性鎮痛薬の鎮痛効果発現の必要量との関連性が明らかになれば、個人個人に合わせた鎮痛法を改良開発することができ、不十分な術後鎮痛、副作用の出現を減少させることができるのではないか。カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT) 遺伝子多型により、痛みの感受性に差があることが確認されている。そこで、COMT 遺伝子多型によって術後の疼痛の程度、鎮痛効果を発現するのに必要な麻薬性鎮痛薬の量、副作用の発現頻度、PCAのボタンを押す回数を調査し、患者特性に合わせた薬物投与計画のための基礎データを作成するのが本研究の目的である。 平成19年4月から平成20年3月までに実施した研究内容は次の通りである。 術後鎮痛の程度及び副作用の有無について調査した。また、各患者さまが全身麻酔導入の後就眠したあと、遺伝子多型解析用の血液5mlを採取した。術後鎮痛の程度、副作用の有無の調査及び採血については、患者さま全員からインフォームドコンセントを取得している。採取し得た検体数は700を超えている。調査を施行するためにインフォームドコンセントを戴いた患者さまの選定基準は、(1)全身状態が良好であること(ASA PS1または2)、(2)全身麻酔または全身麻酔硬膜外麻酔併用麻酔で手術を試行する患者さまであること である。手術終了し、参加患者が、リカバリールーム移動後及び病棟帰室後、術後回診を1-4回施行し、患者さまの術後鎮痛・落痛の程度、副作用の有無、鎮痛量の使用量を記録した。終痛の評価には、verbal rating score、副作用の評価には、悪心・嘔吐、排便の有無、掻痒感を用いた。PCA ボタンを押した回数も評価の対象として用いた。現在、術後鎮痛の程度及び副作用について解析を施行中である。
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