研究概要 |
術後鎮痛における麻酔性鎮痛薬の鎮痛効果の必要量に個人差は大きい。痛覚への感受性を既定する遺伝子多型と麻酔性鎮痛薬の鎮痛効果発現の必要量との関連性が明かになれば、個人個人に合わせた鎮痛法を改良開発することができ、不十分な術後鎮痛、副作用の出現を減少させることができるのではないか。遺伝子多型によって術後の疼痛の程度、鎮痛効果を発現するのに必要な麻酔性鎮痛薬の量、副作用の発現頻度、PCAのボタンを押す回を調査し、患者特性に合わせた薬物投与計画のための基礎データを作成するのが本研究の目的である。 平成21年4月~22年3月までに実施した研究内容と結果の一部は以下の通りである。 術後鎮痛め程度及び副作用の有無について調査した。前年までに採取した検体数は1023、そのうち術後回診を試行した検体数は937であった。その検体から、定法により、DNA抽出を行い、遺伝子多型を判定した。OPRM1 A118G多型については、Allele frequency A=0.547,G=0.453であり、この値はHardy-Weinberg's lawを満たしていた(COMT遺伝子については、只今調査中である)。病棟帰室後、術後回診を施行し、患者さまの術後鎮痛・疼痛の程度、副作用の有無、鎮痛量の使用量を記録した。疼痛の評価には、verbal rating score(0=痛くない、1=弱、2=中、3=強)(安静時、体動時、咳時の3点で調査)、副作用の評価には、悪心・嘔吐、掻痒感を用いた。Verbal rating scoreの平均値は、回復室内:安静時0.28、体動時0.31、咳時0.28、術後6時間(病棟):安静時0.41、体動時0.71、咳時0.78、手術翌朝(病棟):安静時0.52、体動時0.73、咳時0.78であった。副作用は、悪心・嘔吐:回復室6.7%、翌朝13.9%であり、掻痒感:翌朝10.6%であった
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