研究概要 |
ウサギ肝臓虚血再灌流障害モデル(部分肝虚血90分)において、持続ANP投与(0.1mcg/kg/min)群(n=5)と、対照群(n=5)とを比較した。ANP投与群では再灌流3時間後の組織血流量の低下が軽減された(68.2±17.6/100g/min vs 29, 2±5.7ml/100g/min p<0.05)。また、昨年度に引き続き、個体数を増やしてアポトーシスの関与について検討した。具体的には、再灌流後に摘出組織標本を作製し、TUNEL染色によりアポトーシス細胞数を計数した。HE染色による組織学的検討ではANP投与群での組織障害軽減が認められた一方、TUNEL陽性細胞数は両群間に有意な差は見られなかった。再灌流3時間の本モデルにおいては、ANPの作用機序として、肝実質細胞のアポトーシス軽減が有意な機序ではない可能性が高い。 続いて、ANPの肝非実質細胞へ与える影響について検討した。本モデルにおいては組織血流の変化が認められている。そこで、微小肝血流の調節に与る星細胞を対象として検討した。具体的には、星細胞で特異的に産生されるADAMTS13に着目し、再灌流時の経時的変化を測定した。静脈血中のADAMTS13活性は再灌流に伴い、ANP投与群では変化しなかったが、対照群において低下した(95.8±3.9%vs79.7±8.7%p<0.05)。肝虚血再灌流によりADAMTS13活性は低下し、さらにANPは再灌流時の活性低下を抑止することが示された。
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